うんちく
2016.02.01
港町・横浜で生まれたシーフードドリア
多くの観光客が訪れる横浜ですが、そのお目当てといえば、やっぱりグルメ。本格中華から歴史的な洋食まで、さまざまな美食を楽しむことができます。なかには、横浜発祥として知られるメニューもたくさんありますが、意外にもシーフードドリアもその一つだそう。今回は、港町・横浜生まれの定番洋食・シーフードドリアを調査してみましょう。
シーフードドリアはホテルで誕生した
洋食レストランや喫茶店ですっかりおなじみのシーフードドリア。日本で人気の高い洋食メニューの一つですが、それもそのはず。シーフードドリアは、横浜のホテルニューグランドで生み出された料理です。創作者は、日本のホテルのレストランに革命を起こしたことで知られる初代料理長のサリー・ワイル氏。当時、ホテルのレストランでは、一般的に定食が提供されていましたが、ワイル氏は一品料理を豊富に用意し、誰もが喜ぶレストランを目指しました。そんなワイル氏が手がけた創作料理の一つが、シーフードドリアでした。
元祖シーフードドリアの魅力とは?
元祖といえるホテルニューグランドのシーフードドリアですが、その魅力は、バターライスの上にたっぷりの小海老のクリーム煮をのせていること。とろっとしたクリームとバターライスの相性は絶妙です。さらに、そこにソース・モルネ(ソース・ベシャメルに卵黄とチーズを加えたもの)と、チーズをかけてオーブンで焼き上げることで、グラタンのような食感と深いコクを与えています。シーフードのうまみがたっぷり詰まった、濃厚でありながらやさしい味わいの一品です。
お客様の体調を気遣うシェフの気持ちが名物に
今も愛されるホテルニューグランドのシーフードドリアですが、その始まりはワイル氏の粋な計らいによるものだったといいます。当時、ワイル氏は「コック長はメニュー外のいかなる料理にもご用命に応じます」とメニューに書き、お客様一人ひとりの要望に応じて料理を提供していました。この時代のシェフは、厨房から一歩も出ないという風潮がありましたが、ワイル氏はお客様と対面し、気さくにリクエストを受けるという、いわば型破りなシェフでした。
そんなある日、「体調が良くないので、何かのど越しの良いものを」というスイス人のお客様からのリクエストが。そこでワイル氏が、その要望に応えるべく創作した料理が、シーフードドリアでした。まろやかでありながら粘り気がなくのど越しの良いソースは、体調不良でも食べやすいよう考え抜かれており、大変な好評を受けたそうです。そして、”Shrimp Doria”(海老と御飯の混合)として、いつしかニューグランドの名物料理の一つになりました。
そもそもドリアはどこの国生まれ?
ドリアはグラタンにライスを入れたような料理であるため、フランス料理と思われがちですが、そもそもドリア自体が横浜ニューグランドホテル生まれ。すなわち、ワイル氏によって考案されたものなのです。「ドリア」という名前も、ワイル氏がお客様から料理名を聞かれた際にアドリブで考えたもの。世界的に有名なイタリア貴族の「ドリア家」にちなんで名付けたといわれています。
ワイル氏の創作料理だったものが、今では洋食レストランに出かけると、必ずといっていいほどの定番メニューになっているだなんて驚きですね。
食の歴史が詰まった横浜でグルメ三昧
定番になっているメニューのルーツを探ると、地域性や創作したシェフの思いが見えてきますね。横浜で中華料理を食べるのか、それともシーフードドリアを食べるのかと悩ましいところですが、横浜を訪れたら一度は食べておきたい一品であることに間違いありません。横浜を練り歩き、グルメ三昧な休日を過ごしてみませんか?